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夢見の国
第2章 甘美な冷遇
◆
遠くから送られてくる涼しげな風の音が心地良い。
あたしは、眩しさに閉じていた瞼を開いた。
目前に広がる、青々とした草原と、その向こうには凪いだ深い青の海。
近頃見る夢がおかしいと思っていたが、ここまで鮮明に見る夢は初めてだった。
いつもと同じくベッドに潜って、目を閉じた途端にまばゆい光に襲われ、顔を覆ったのだ。
ここは、どこだろう?
遠くに塀のようなものが見える。
あれは町だろうか。
木陰に移動しながら辺りを見渡す。
木の幹に腰をかけた途端に、地響きを体に感じた。
だんだん近くなり、それが馬の蹄の音だとわかった。
あたしは、映画と同じような音がするんだ、と暢気に考えたりしている。
体がふわふわしているようだ。
夢にしては、ココはあたしの理想を描いたような場所だ。
温かい国。
美しい自然に、雲ひとつない空。
そして、ここまで来たらお決まりは美しく逞しい男だろう。
あたしは、蹄が止んだ背後を振り返った。
ドクン、と鼓動が跳ね上がる。
夢のようにふわふわした体が、急速に我に返った。
「何者だ?」
形良い唇から、理想の低音が放たれた。
馬上から見下ろす、灰色の鋭い瞳。
「ルイザの里に何用だ、ここから何を見ている」
尋問のような怒った口調に、再び我に返る。
男らしいオーラを感じる浅黒く逞しい肢体や、日の光に輝く銀髪や、端正な顔立ちに見とれている場合ではない。
「あ、あたしは…いつの間にかココにいて…」
「怪しげな恰好をして、ヘタな嘘はつかぬ事だ」
「へ…」
あたしはぎょっとして、自分の姿を見下ろした。
パジャマ姿である。
しかも、今日に限って女らしさのオの字もないジャージなのである。
「もー!やだー!」
しゃがみ込んだあたしを、男は胡散臭そうに一瞥したが、身軽な動きで馬から降りた。
「…とにかく、共に来てもらう」
大きな手に腕を引かれ、流石に少し警戒心が芽生えた。
「あなたこそ何者よ?」
男は、鋭い灰色の瞳を細めた。
「俺はルイザの里の守護長、ラーストだ」
ラーストの逞しい腕が、あたしを軽々と馬上に乗せた。
遠くから送られてくる涼しげな風の音が心地良い。
あたしは、眩しさに閉じていた瞼を開いた。
目前に広がる、青々とした草原と、その向こうには凪いだ深い青の海。
近頃見る夢がおかしいと思っていたが、ここまで鮮明に見る夢は初めてだった。
いつもと同じくベッドに潜って、目を閉じた途端にまばゆい光に襲われ、顔を覆ったのだ。
ここは、どこだろう?
遠くに塀のようなものが見える。
あれは町だろうか。
木陰に移動しながら辺りを見渡す。
木の幹に腰をかけた途端に、地響きを体に感じた。
だんだん近くなり、それが馬の蹄の音だとわかった。
あたしは、映画と同じような音がするんだ、と暢気に考えたりしている。
体がふわふわしているようだ。
夢にしては、ココはあたしの理想を描いたような場所だ。
温かい国。
美しい自然に、雲ひとつない空。
そして、ここまで来たらお決まりは美しく逞しい男だろう。
あたしは、蹄が止んだ背後を振り返った。
ドクン、と鼓動が跳ね上がる。
夢のようにふわふわした体が、急速に我に返った。
「何者だ?」
形良い唇から、理想の低音が放たれた。
馬上から見下ろす、灰色の鋭い瞳。
「ルイザの里に何用だ、ここから何を見ている」
尋問のような怒った口調に、再び我に返る。
男らしいオーラを感じる浅黒く逞しい肢体や、日の光に輝く銀髪や、端正な顔立ちに見とれている場合ではない。
「あ、あたしは…いつの間にかココにいて…」
「怪しげな恰好をして、ヘタな嘘はつかぬ事だ」
「へ…」
あたしはぎょっとして、自分の姿を見下ろした。
パジャマ姿である。
しかも、今日に限って女らしさのオの字もないジャージなのである。
「もー!やだー!」
しゃがみ込んだあたしを、男は胡散臭そうに一瞥したが、身軽な動きで馬から降りた。
「…とにかく、共に来てもらう」
大きな手に腕を引かれ、流石に少し警戒心が芽生えた。
「あなたこそ何者よ?」
男は、鋭い灰色の瞳を細めた。
「俺はルイザの里の守護長、ラーストだ」
ラーストの逞しい腕が、あたしを軽々と馬上に乗せた。