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夢見の国
第2章 甘美な冷遇
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馬上に乗る際に、寝る前には必ず梳いていた、背中までの黒髪がラーストの頬にかかかったので、夕べ長風呂をして良かったなどと訳のわからないコトを考えてしまう。

そんな乙女心とはまるで間逆の事を考えている様な乱暴な様子で、ラーストは自分の方に流れてきた黒髪を指先で払い、あたしに長い布を被せた。


「これを羽織っていろ。…異国の娘。我が国では名を聞いたら自らも名乗らねば無礼にあたる」


何者だと再び遠回しに聞かれ、この国に限らず、ひとりの大人としても気の回らない自分の様に赤面した。


「原田 舞里(ハラダ マイリ)です」


そう名乗ると、何処か発音が違うのだろうか、聞き取りづらそうにラーストが眉を寄せた。

言葉は通じているのにと怪訝に思いながらも、夢だしと深くは考えない。


「舞里…マイリって言います」


ラーストが無言で頷いて、舞里の後ろに跨がった。

ブルルと、馬が鼻を鳴らす。

背後から両腕を回され、馬が走り出した。


「マイリ」


耳元で名を呼ばれ、どきりと一度跳ねてから、鼓動が全身を支配してゆく。


「頭から布を被って、しっかり捕まっていろ」


ラーストの片腕が腰に回された。

必死にお腹を引っ込める自分に焦りを感じた。

まだ会ってばかりの、しかも自分を連行しようとしている夢の中の住人に、急激に惹かれていた。



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