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夢見の国
第2章 甘美な冷遇
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ひとり葛藤していた間、ラーストはただ黙っていた。

ゼイルも、じっとラーストを見つめたまま同じ様に黙っていた。

そんな二人に気付いたあたしは、思わず思考を止め、倣うように息を詰め黙って二人を見つめていた。

だが、いつの間にかそんな二人に見とれてまう。

陶器のような肌を持つ、端正で精悍なラースト。

美しく繊細な容貌のゼイル。

夢とはいえ、自分の事でこんな美形達が言い争うなんて、何と贅沢なのことか。


(…って、ちがーう!)


がじがじと頭を掻き回した。

現実は、一目惚れした男からよく分からない風に疑われ、危険な状況にさせられていて、庇ってくれているゼイルは、何やらラーストに野蛮なマネをしてほしくないから、庇っているのだと、冷静に見れば分かる。


(夢の中でくらい、贅沢に溺愛してくれる人が現れたって良いのになぁ…)


ある哀しい想いが蘇る。

ため息をつくと、ラーストがあたしの存在に気付いたかのように顔を上げた。


「異国の娘、布を取れ」

「え…?」

「異国?」


目を見開いたあたしの顔は、ラーストに言われた通りまだ布で隠していた。

怪訝そうにしているゼイルの横を通りすぎて、近づいてくるラーストに驚いているあたしは、身動きが取れない。

ラーストは、灰色の瞳を銀に染めた様に怒っているように見えた。


「ラースト、さん…?」


呟く様にラーストの名を呼ぶあたしを覗き込むようにして、ラーストは銀に染まった瞳を、野性の獣みたいに細めた。

その神秘的な瞳を間近で見てしまい息を呑む。


「……っ」


この人が欲しい、と本能的に思っていた。

そう、思ったのに。

…なのに、何故…。


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