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異聞 ヘンゼルとグレーテル
第4章 3
 ニヤニヤと笑う魔女により、グレーテルのその声は布団に潜ったヘンゼルにも鮮明に届けられていた。まるですぐ傍にいるかの様に、乱れた吐息までもが鼓膜に響く。息が上がり、熱くなった自身が苦しい。耳を塞ぎたいと思うのに……

 どうして、そんな甘い声……
 一体何処を、どんな風に触ってるの?
 君は今、どんな顔して泣いてるの?

 グレーテルの事が気になってしまう。
 
 あぁ、グレーテル……
 
 グレーテルを思い身動いだ拍子に自身が擦れ、甘い痺れがヘンゼル身体を突き抜けた。危うく悲鳴を上げそうになって、必死に耐える。

 なに?
 今、の……

 確かめようと、同じ様に身動いで。
「はっ……」
 目眩がしそうな快感に怒張が強くなる。それを収めようと上から押さえたのと同時、
「やっ、だ。おにい、ちゃ……ぁんっ」
 鼓膜に響いたグレーテルの甘い声。
「っ、グレーテル……!」
 ドクンと強い拍動と共に再び甘い痺れが身体を突き抜け、弾けそうになったヘンゼルは咄嗟に自身をキツく握り締めていた。ドクドクと脈打つ自身は今までになく熱く疼いていて。

 今、僕……何を?

 自分のしようとしていた事が何なのか、子どものヘンゼルには分からない。酷く混乱した心の内に込み上げてくるグレーテルに対する漠然とした罪悪感。ヘンゼルはグッと奥歯を噛み締め、苦い疼きを堪えようとした。

でも……

「足りないのなら、手伝ってやろうか?」
 頭に響いた魔女の声に、ヘンゼルの身体がビクッと跳ねる。
「なっ!」
 慌てて手を離し、聞こえてきたグレーテルの悲痛な声。
「やっ、だ……」
 自分に対する声かけではなかった事が救いである筈もなく……
「どうして欲しいんだい?グレーテル」
 魔女の責め苦は終わらない。
「も、もう、や……だ。やめ、て」
 ふるふると左右に首を振るグレーテルの心情とは裏腹に小さな手は二つの幼い芽をクリクリと弄り続ける。そうと分かるように視線を這わせ、魔女が目を細めた。歪んだ笑みの下、パチンと鳴らされた指を弾く音。グレーテルが今にも泣きそうに顔を歪めた。
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