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第2章 晦日(つごもり)

二人が黙り込んでしまったため、雅には診察室の壁掛け時計の秒針の音が妙に大きく感じられた。

武田は微動だにせず立ち尽くしたままの雅を、頭の先から爪先までまさに舐めるように眺めていた。

数分ほど経った頃、武田がふいに口を開いた。

「助成金もいいけど……君は長く生きる気がない。つまりそう遠くない未来に死ぬ予定なんだよね。何か病気?」

突っ立って武田の出方を待っていた雅は首を振る。

長い黒髪もその動作でさらさらと揺れ、そのあまりにも子供っぽいしぐさが、雅の精神面と外見の歪さを浮き彫りにする。

「じゃあさ。君が死ぬ時は、残りの人生を僕にくれない――?」

武田は挑発的な笑みを面に張り付けて、雅を見つめる。

「……どういう意味でしょう? ペットの様に貴方の愛玩物となれ……という意味ですか?」

雅は汚いモノを見るような目で、武田を見返す。

「ふ……それもいいけど、僕は永遠の美にしか興味がなくてね。君が死んだら標本にして、毎日楽しませてもらうつもりだよ。別に死ぬ気なら、それでもいいよね?」

「だから、死ぬ時は献体に申し込んでおいてね?」と、武田はまるで「今度のデートの約束、忘れないでね」というのと同じ軽さで、ひょうひょうと言ってのける。

「……私の気が変わって、死ぬのが嫌になって生き続けると言い出したら、どうするのですか?」

「そうだね〜。それは僕にとってはつまらないけれど、まあ報酬は上乗せして頂くことにするし、一応医師だからね。患者が生きていてくれるなら、それでもいい」

「………………」

(……この人を信用して、大丈夫だろうか――)

雅は武田の本意が読めず困惑するが、武田はそんな雅も可愛いという風に片目をつむってよこす。

「……変な方」

雅には武田は頭が切れるのか、単なる変わり者なのか判断が付かない。

(ただ、これで薬は確保出来る。多少の犠牲は払ってでも、今は手に入れなければならない。たとえそれで、自分の亡骸を差し出すことになろうとも――)

「薬は用意しておくから、後日取りに来て。それと、今日は点滴を受けて帰りなさい、全く酷い顔色だ……ちゃんと食事を取っているかい?」

「………………」

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