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第13章 下弦の月

しかし雅は立ち去るどころか、呆けたように加賀美を見ていた。

「……わたがしって何?」

良家の子女が庶民の屋台のお菓子を知る筈もない。

加賀美が面倒臭いと思い始めた頃、

「雅、ここにいたのか……みんな探しているよ?」

「お兄ちゃま!」

三歳児の雅は中学生の月哉に、軽々と抱っこされる。

「ねえ、お兄ちゃま。わたがしって、なあに?」

小さな雅は首を傾げながら、月哉に問いかける。

「今の雅みたいに、白くてフワフワしたお菓子だよ」

月哉は雅の色白で、マシュマロのようなほっぺをつついた。

「食べてみたい」

雅は好奇心旺盛な瞳をくりくりとさせ笑顔になる。

しかしここには綿菓子を作る機械なんてあるはずがない。

「……無理だよ」

加賀美は熱が上がり始めた体を椅子の背もたれに凭れさせ、ぼそりと呟く。

月哉はしばらくしげしげと加賀美を見ていたが

「そうでもないよ、作って貰おう!」

そう言うと、傍にいた使用人に何か言付けた。

暫くするとパティシエがワゴンを引いて現れた。

「お坊ちゃまのお洋服が汚れるといけませんから、被っておいてくださいね」

使用人が加賀美にブランケットを掛けてくれる。

熱で寒気を感じていた加賀美は、大人しくくるまれた。

その暖かさにぼぅとしていると、隣にいた雅が月哉の腕の中できゃあと歓声を上げた。

何かと顔をあげると、目の前に金色に輝く蜘蛛の糸が舞っていた。

パティシエがアメ細工を即席で用意してくれたのだ。

「雅、これが綿菓子だよ」

「わあ……きれい」

雅は目を輝かせて笑っていた。

「はいどうぞ……お坊ちゃん方」

パティシエは、大きな苺に綿菓子を纏わしたお洒落な綿菓子を三人に配った。

「あまい……美味しいね、お兄ちゃん」

雅は苺を頬張ると、加賀美ににっこりと笑った。

加賀美も頬張る。綿菓子の甘さと苺の酸味が良く合って、とても美味しかった。

「……そうだな、綿菓子」

ぶすっと加賀美が答えると、雅は頬を膨らませた。

「綿菓子じゃなくて、みやびだよっ!」

「そうだよな、綿菓子ちゃん」

月哉も面白がって雅をからかう。

クスクスと笑う声が聞こえてくると思ったら、三人の周りには多くの人が集まっていた。

その中心で、雅はコロコロと鈴のように笑っていた。


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