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第3章 三日月

「ん~~でも、弁護士は他の職業に比べて守秘義務があるから、もしかしたら無理かもしれないけれど」

「鴨志田の顧問弁護士としての時だけでも、いいのだけれど……やはり、ご迷惑かしら」

雅は食い下がりながらも、しゅんとして見せる。

「……雅がそこまで言うのなら本人に確かめてみるよ、でも、もし無理だったら私の取材で手を打ってくれる?」

俯いてしまった雅の頬を両手で挟んで、兄が顔を覗き込んでくる。

「ホントっ? ありがとう、お兄様大好きっ!」

雅は喜んで見せ、兄の首に抱きつき頬に口付けをする。

機嫌の戻った雅を兄は横抱きして暫く喜んでいたが、

「でも普通は話の流れ的には『お兄様がいい』って言うとこなんじゃないのか? なんだ、雅はKYか?」

とすこぶる不服そうな顔をしていた。  

雅は心の中で「お兄様って、たまに子供っぽいのよね」と苦笑いした。







数日後、兄から敦子が取材を快く引き受けてくれたとの連絡が入った。

(当然だろう、顧問先の社長令嬢のささやかな望みを、叶えてくれないわけがない)

使用人を通じて敦子と雅の都合の付く日を調整して、五日間の取材が始まった。

取材初日。

ユナイテッド弁護士法人に赴くと、雅はパートナーの木村から皆に紹介された。

敦子は法人担当で鴨志田以外にも複数の法人を担当しているが、雅が同行できるのは鴨志田に関わる案件に関してだけとなる。

永田町にあるオフィスには弁護士が八人おり、各人に個室が与えられているのだが、敦子の部屋には度々、同僚弁護士やそのセクレタリが雅に挨拶をしに来てくれた。

「いや~~可愛いねぇ~~、雅ちゃん。ホントお人形さんみたい」

「そんな……ありがとうございます」

「これ、クライアントからの頂き物だけど、一緒に食べよう」

「はい」

「長野さん~~、雅さんは遊びに来ているのではないので、おやつは後にしましょう~~」

敦子はうんざりと長野弁護士を諌める。

「え~~。いいじゃん、もう三時だしさ~~」

「雅さん、さっきからおやつ攻めされて、もう五人分食べているのよ」

確かにさっきから甘いものを食べてばかりで内心うんざりし始めてはいたが、雅は愛想よく「そんなこと無いですよ」とにっこり笑って見せる。

「可愛い~~」

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