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第8章 十六夜月(いざよい)

目を見開いて月哉を見返してくる東海林に、

「何故、隠れて行われた虐待が明るみになったと思う?」

と月哉が尋ねてきた。

「……使用人が気付いたのでしょうか」

「雅が七歳の時、自分で木村弁護士に助けを求めたんだ――」

「……――っ」

東海林はもう絶句するしかなかった。

一瞬頭が真っ白になった。

(数十人もの使用人を召し抱えている本家。なのに、なぜ誰一人虐待に気づかなかったのだ――!)

そんな東海林の反応を、月哉は妙に冷めた瞳で見つめていたが、やがて口を開く。

「初等部に上がったばかりの子供が、弁護士という正義の味方を授業で知ってね、私にも使用人にも相談せず――弁護士に頼った」

「……社長に知られたくなかった」

東海林は思ったままを口にする。

使用人に助けを求めると、確実に主人である月哉の耳に入る。

弁護士なら守秘義務があるから、雅が口止めをしたら月哉が知ることはない。

「ああ、雅は木村先生に、私には知らせないのを条件に全てを話したらしい。まあ、その辺は子供の考える事だ。弁護士の雇用主は私だし、幼児虐待を報告しない訳にはいかないからね。だが、私はずっと知らない振りをしなければならなかった――」


長年辛酸を舐め続けた鴨志田の分家・宮前一族は、海外訪問中の鴨志田当主夫妻が列車事故で他界した事をきっかけに、まだ物心の付かない雅を言われるがままの操り人形にした。

口答えせず、宮前の者達に従っていれば見せ掛けの愛情を、自我を表すと部屋に閉じ込められ、食事を抜き、見えない場所への折檻という罰が与えられた。

月哉はまだ中等部の学生で、日中はほとんど屋敷にいなかった為、雅に対する虐待は雅が初等部に入るまでの間、気づかれることはなかった。

雅は月哉に助け求めたことは、一度も無かった。求められなかった。

宮前一族は、月哉にばらしたら次のターゲットを月哉にすると脅し続けていたため、雅は助けを求めることが出来なかったのだ。

今から考えるとなんてことはない。

月哉はその時にはもう分別の付く年齢になっていたし、おめおめ虐待を受けるようなことはありえなかった。

しかし幼すぎた雅には、そのような判断が出来るはずもなく、木村弁護士の前で泣きながら自分を責め続けたという――。

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