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第8章 十六夜月(いざよい)

仕事の都合で何度もここには泊まっている。

寝不足と蓄積した疲労の為か、本当にいつもより酔いが回るのが早いようだ。

長めのシャワーを浴びると、広いバルコニーに出て火照った身体を冷やす。

一月の底冷えする空気が、酔いの回った脳を覚醒させてくれる。

東海林は先程の鈴木のこぼした疑問を、頭の中で何度も反芻していた。


『一度三途の川を跨いだ人間というのは、性格まで百八十度変わってしまうものですかね――』


誰にも我が儘を言ったり、自分の気持ちをさらけ出したりしたことが無かった雅。

誰にでも公平に接するけれど、特定の対象に深入りするのを怖がっていた雅。

自分の置かれた立場を必要以上に感じ取り、それによる重圧に独りで耐え、それに相応しくあろうと努力していた雅。

自分は雅のその不器用さが歯痒くもあり、もどかしくもあり、愛おしかった――。

ずっと側で支えてあげたかった。

しかし、今の雅はあまりにも違いすぎる。

あまりにも急激に、しかも正反対に変わってしまった。

決して、それが悪いということではない。

自殺未遂を犯す前と何も変わらなければ、雅はまた届かない兄への思いを独り抱えて、消えてしまおうとするだろう。

「演技――?」

雅がなりたい自分を、演技している?

演技がいつか本当になるなら、それでもいい。

そしていつか、兄以外の人間にも興味を持つ様になってくれれば――彼女はもっと幸せになっていい筈だ。

(しかし、記憶障害も演技なのだろうか――?)

月哉を――恐らく敦子のことも――忘れたふりをする必要が、あるだろうか。

医学に素人の東海林が考えても堂々巡りだった。

東海林は部屋に戻り眠りについた。



久しぶりによく眠れ、翌朝の寝起きは快適だった。

使用人が用意してくれた着替えを着て支度を済ませると、雅付きの後藤が迎えに来てくれた。

「おはようございます、東海林さん。昨日お嬢様に泊まるよう、ねだられたそうですね」

庭へ続く廊下を先導してくれる後藤に、東海林は苦笑いして見せる。

「雅様の普段のご様子はどう?」

敦子に会った位からの記憶が抜けているということは、夏休みの約二月分の記憶がないという事だ。

学校には十二月から復帰したと聞いていたが、色々と大丈夫かと心配になる。

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