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色欲のいりひ
第5章 おげんきですか
リビングへ行くと、凄惨な光景が俺の目に飛び込んできた。
パジャマ姿でうつぶせで倒れている男がいる。
その男は背中から大量の出血をしていた。
瞳孔が開いていた。
すでに息絶えていたのだろうと推測できる。
あたり一面血の海。
俺は茉莉の様子をうかがうと、右手には包丁を持ち、そしてその包丁の刃先には鮮血がこびりついてる。刃先から滴り落ちる赤い血。
茉莉は無表情だった。
おびえる素振りもなく、しっかりと正面を見据えていた。
月光だけが残酷にリビングを照らす。
「逃げろ茉莉! 」
俺は大声で怒鳴った。
茉莉は一瞬驚いて俺の方を振り向いた。
俺が再度怒鳴り散らすと、茉莉は我にかえったのか、
普段みせない俺の怒りに、茉莉は周章狼狽していた。
「俊くん…… やっちゃった…… 」
涙目だった。
「いいから早くしろ! 」
俺は人に対して生まれて初めて怒鳴った。
茉莉は両目を見開き、後退りをした。
包丁が右手から落ちる。
「だから、早く行け! 」
さらに大声をあげると、
茉莉は血相を変えて、その場を去って行った。
俺は床に落ちた包丁を右手で拾う。
しばらくして警察がやってきた。
俺の右手には血の付いた包丁がしっかりと握られていた。
警察は俺の右手を一度鋭く睨みつけ、そして俺に向かい言った。
「お前がやったのか」
「俺が…… やりました…… 」
警察は俺の両手に手錠をかけた。
外に連れ出され、川沿いに止めてあるパトカーに乗せられる。
両手にはしっかりと手錠が嵌められている。
「ねぇお巡りさん」
「なんだ」
「人間らしく生きるって、きっとこういうことを言うのでしょうね」
俺は手錠を嵌められている両手を見つめていた。
それを察知したのかお巡りさんは、
「煙草吸うか」
と話しかけて来た。
「すんません。俺、煙草は吸わないんです」
「そうか」
俺は野川を見つめた。
少し欠けた月が水面に映りゆれている。
「あの月は色欲をあざ笑うんです」
車内には静寂が流れる。
この町の夜と同じように。
ルームミラーに映るお巡りさんの表情は、幾分寂しげだった。
「行こう」
サドシートに乗ってるお巡りさんが言うと、パトカーはゆっくりと走り出した── 。
これでいい。
これでいいんだ。
これで……。
パジャマ姿でうつぶせで倒れている男がいる。
その男は背中から大量の出血をしていた。
瞳孔が開いていた。
すでに息絶えていたのだろうと推測できる。
あたり一面血の海。
俺は茉莉の様子をうかがうと、右手には包丁を持ち、そしてその包丁の刃先には鮮血がこびりついてる。刃先から滴り落ちる赤い血。
茉莉は無表情だった。
おびえる素振りもなく、しっかりと正面を見据えていた。
月光だけが残酷にリビングを照らす。
「逃げろ茉莉! 」
俺は大声で怒鳴った。
茉莉は一瞬驚いて俺の方を振り向いた。
俺が再度怒鳴り散らすと、茉莉は我にかえったのか、
普段みせない俺の怒りに、茉莉は周章狼狽していた。
「俊くん…… やっちゃった…… 」
涙目だった。
「いいから早くしろ! 」
俺は人に対して生まれて初めて怒鳴った。
茉莉は両目を見開き、後退りをした。
包丁が右手から落ちる。
「だから、早く行け! 」
さらに大声をあげると、
茉莉は血相を変えて、その場を去って行った。
俺は床に落ちた包丁を右手で拾う。
しばらくして警察がやってきた。
俺の右手には血の付いた包丁がしっかりと握られていた。
警察は俺の右手を一度鋭く睨みつけ、そして俺に向かい言った。
「お前がやったのか」
「俺が…… やりました…… 」
警察は俺の両手に手錠をかけた。
外に連れ出され、川沿いに止めてあるパトカーに乗せられる。
両手にはしっかりと手錠が嵌められている。
「ねぇお巡りさん」
「なんだ」
「人間らしく生きるって、きっとこういうことを言うのでしょうね」
俺は手錠を嵌められている両手を見つめていた。
それを察知したのかお巡りさんは、
「煙草吸うか」
と話しかけて来た。
「すんません。俺、煙草は吸わないんです」
「そうか」
俺は野川を見つめた。
少し欠けた月が水面に映りゆれている。
「あの月は色欲をあざ笑うんです」
車内には静寂が流れる。
この町の夜と同じように。
ルームミラーに映るお巡りさんの表情は、幾分寂しげだった。
「行こう」
サドシートに乗ってるお巡りさんが言うと、パトカーはゆっくりと走り出した── 。
これでいい。
これでいいんだ。
これで……。