この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
色欲のいりひ
第5章 おげんきですか
 リビングへ行くと、凄惨な光景が俺の目に飛び込んできた。
 パジャマ姿でうつぶせで倒れている男がいる。
 その男は背中から大量の出血をしていた。
 瞳孔が開いていた。
 すでに息絶えていたのだろうと推測できる。
 あたり一面血の海。
 俺は茉莉の様子をうかがうと、右手には包丁を持ち、そしてその包丁の刃先には鮮血がこびりついてる。刃先から滴り落ちる赤い血。
 茉莉は無表情だった。
 おびえる素振りもなく、しっかりと正面を見据えていた。
 月光だけが残酷にリビングを照らす。
「逃げろ茉莉! 」
 俺は大声で怒鳴った。
 茉莉は一瞬驚いて俺の方を振り向いた。
 俺が再度怒鳴り散らすと、茉莉は我にかえったのか、
 普段みせない俺の怒りに、茉莉は周章狼狽していた。
「俊くん…… やっちゃった…… 」
 涙目だった。
「いいから早くしろ! 」
 俺は人に対して生まれて初めて怒鳴った。
 茉莉は両目を見開き、後退りをした。
 包丁が右手から落ちる。
「だから、早く行け! 」
 さらに大声をあげると、
 茉莉は血相を変えて、その場を去って行った。 
 俺は床に落ちた包丁を右手で拾う。
 しばらくして警察がやってきた。
 俺の右手には血の付いた包丁がしっかりと握られていた。
 警察は俺の右手を一度鋭く睨みつけ、そして俺に向かい言った。
「お前がやったのか」
「俺が…… やりました…… 」
 警察は俺の両手に手錠をかけた。
 外に連れ出され、川沿いに止めてあるパトカーに乗せられる。
 両手にはしっかりと手錠が嵌められている。
「ねぇお巡りさん」
「なんだ」
「人間らしく生きるって、きっとこういうことを言うのでしょうね」
 俺は手錠を嵌められている両手を見つめていた。
 それを察知したのかお巡りさんは、
「煙草吸うか」
 と話しかけて来た。
「すんません。俺、煙草は吸わないんです」
「そうか」
 俺は野川を見つめた。
 少し欠けた月が水面に映りゆれている。
「あの月は色欲をあざ笑うんです」
 車内には静寂が流れる。
 この町の夜と同じように。
 ルームミラーに映るお巡りさんの表情は、幾分寂しげだった。
「行こう」
 サドシートに乗ってるお巡りさんが言うと、パトカーはゆっくりと走り出した── 。
 これでいい。
 これでいいんだ。
 これで……。
 
/16ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ