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色欲のいりひ
第4章 4
 今日も例外なく茉莉がやってきた。
 天気がよいので布団を干すことにした。
 テラスの壁に布団をたらす。
 布団たたきで布団を叩く。
 凄いほこりが飛び散っていく。
 かれこれ半年は干していない。
 だから当たり前と言えば、当たり前なのだが…… 。
「布団、かなりの期間干してなかったでしょ」
 茉莉がテラスにいる俺に言った。
 さすがだなと、俺は心の中で思っていた。
 埃の量で布団を干していなかったのかがわかるのだから……。
 俺はテラスから部屋に戻り、部屋の中央に座る。すると茉莉は何も言わずに『すのこ』の部屋に向かう。そして横になる。今日は簾をしていない。なのになぜ茉莉は自ら『すのこ』の部屋を選んだのか。テントの部屋もあったはずなのに。俺に対しての当てつけなのか? それとも何か考えがあってのことなのか? 俺はしばし考えていた。
 まだ西日は差し込まない。
 冷静なうちになんとかしよう、と思い、
「今日は帰っていい」
 俺は茉莉に告げた。
 だが茉莉は俺に背中を向け、横になったまま動かない。
 見慣れた光景だが、俺の心の中には何も響かない。
 いったいこの人は何をやっているんだ。
 そんな感覚にすら陥るくらい、しらけてしまっている。
 すでに録画すらしなくなった。
 クーラーボックスに入っている、ペットボトルの水を飲み、ガリガリくんを口にしている。茉莉のお腹が、ギュルギュルいいはじめている。
 右手でお腹を押さえ始めた。
 左手を床につき、顔はうつむき必死にお腹の苦しみと戦っているのがうかがいしれた。
 地面を向いているその顔からは、顎を伝い汗が滴り落ちる。うなじからは汗が流れ落ち。それは腕を伝い地面へとたどり着く。
 かなりの汗の量だった。
 透明の合羽はどしゃぶりの雨にうたれたように濡れていた。
 茉莉は合羽を素早く脱ぐぎ『すのこ』の上に置く。
 俺はその合羽を拾いにテラスに出る。
 テラスに出て、合羽を右手で掴み両手でそれを絞ると、滝のように汗が流れ落ちていく。
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