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純愛ハンター
第8章 裁き8、マイスイートホーム
「私…お父様のおよめさんになるっ!」

お嬢は幼い頃から父が大好きだった。
自宅にはいつも将来の総理候補と目される与党議員であった父の元に大勢の大人が訪れていたのだが、大人たちは父に対してゴマをすったり卑屈にすり寄っている訳ではなく、父を1人の人間として頼り尊敬しているという事が幼いお嬢にもハッキリ見て取れたからだった。
大人とは“心から笑わない生き物”だと思っていたお嬢にとって、父と会話をしている大人たちが心の底から感情を露わにしているという事実はファンタジーな光景であり、父はお嬢にとって最も近くて最も遠いスーパーヒーローのような存在だった。

(私も大人になったらあんな風に…お父様みたいになれるのかなぁ?)

メディアは常に父を圧倒的な『正義』として扱い、そんなイメージ通りに大柄な体躯で背筋をピンと伸ばして笑顔を絶やす事のない父が、お嬢はとても誇らしかった。だが…
バシっ…!

「キャッ…!」

ガンっ…!

「あうっ…!」

バチンっ…!

「うぁっ…!」

父は時おり突然ヒステリーを起こし、お嬢を拳や平手で殴る事があった。

「お前が俺にちゃんと優しくしないから今日の笑顔がイマイチだったんだ!陰でコソコソ俺を笑った奴がいたんだ!笑われた…笑われたんだぞっ…!俺が笑われてお前は平気なのか!俺が恥をかいてもお前は平気なんだな!冷たい奴めっ!」

ゴツっ…!

「あうっ…!」

バシィっ…!

「ぐっ…!」

お嬢は父に殴られて前歯が欠けたり鼻血が止まらなくなってしまう事もあったが、お嬢は子供ながらに自身が父を陰で支える存在である事に強い誇りを持っており、

「ゴメンなさい…私はお父様の事を心から愛しているのに、それをお父様にちゃんと示せなかったのが悪いんです…これからちゃんとしますから許してください…嫌いにならないでください…」

泣いたり歯向かう事なく素直に心から反省の弁を述べた。
そのたびに父はお嬢を優しく抱擁すると、

「緑、お父様を悲しませないでくれよ?正しい人になりなさい…正しくて優しい子にならなくちゃダメだ…」

嗜めながら頬にキスをしてくれた。
父は仕事での正念場が続くと殴る…程度では済まないほど怒り狂う事もあったが、お嬢はそのたび「父を次のステージに成長させられるのは自分だけだ…」という自負をどんどん強めていった。
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