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初メテノ夜ジャナクテ
第1章 1
人が多いけれど、夜空に大きく咲く花火はちゃんと見える。
「きれいだね」
少し背伸びしたら、ふいに肩を抱き寄せられた。
「賢人、くん……?」
「りお」
花火を見ていたはずなのに、賢人くんの真剣な顔が目の前にある。
「ずっと好きだった」
花火と花火の合間に言われて、ぎゅっと抱き締められた。賢人くんの体温やシトラスの匂いや声が、私と重なってしまうくらいの距離にある。
好き、という言葉が意味を持って耳に届いたとき、私はなんて答えたらいいか分からなくてその場に固まってしまった。
幼いころからずっとそばにいたけど、こんなことを言われたのは初めてだ。
「今すぐ返事しなくていいから」
賢人くんは、私の髪を撫でて笑った。
「これからもそばにいるし、俺は待つから。気持ち、聞かせて」
一点の曇りもないような笑顔の向こうで花火が上がって、大きく大きく夜空に咲いた。
賢人くんと夏祭りに行った日から一週間が過ぎたけれど、私は何気ないLINEすら送るのをためらってしまっている。
これまで、賢人くんのそばにいて幸せだと思ったことは何度もあった。賢人くんはモテるから、きっと他に彼女がいるだろうと思ってしまっていた。
私は賢人くんみたいに笑えないし、誰とでも仲良くなれないから、ふさわしくないかもしれないけど、でもずっと、賢人くんのこと、好きだったよ。
「私も」
ってすぐに言えたらよかったのに、言えなかった。
嘉村さんとのことを、忘れようとしても忘れられないから。嘉村さんのことはべつに好きじゃなかったけど、私は夢のために誘いを断れなかった。
こんな汚い私のことを知ったら、賢人くんはがっかりすると思う。だから、大好きだけど、「私も」って、言えない。
ごめんね、と言う勇気もなくて、連絡を先延ばしにしたまま、毎日賢人くんのことばかり考えていた。
「二百十六円になります」
「ちょっと、お姉さん。これ三百円の札ついてるけど。間違えてるんじゃないの」
バイト先でレジを打っていたら、お客さんに間違いを指摘された。
もう何年も百均で働いているのに。
「きれいだね」
少し背伸びしたら、ふいに肩を抱き寄せられた。
「賢人、くん……?」
「りお」
花火を見ていたはずなのに、賢人くんの真剣な顔が目の前にある。
「ずっと好きだった」
花火と花火の合間に言われて、ぎゅっと抱き締められた。賢人くんの体温やシトラスの匂いや声が、私と重なってしまうくらいの距離にある。
好き、という言葉が意味を持って耳に届いたとき、私はなんて答えたらいいか分からなくてその場に固まってしまった。
幼いころからずっとそばにいたけど、こんなことを言われたのは初めてだ。
「今すぐ返事しなくていいから」
賢人くんは、私の髪を撫でて笑った。
「これからもそばにいるし、俺は待つから。気持ち、聞かせて」
一点の曇りもないような笑顔の向こうで花火が上がって、大きく大きく夜空に咲いた。
賢人くんと夏祭りに行った日から一週間が過ぎたけれど、私は何気ないLINEすら送るのをためらってしまっている。
これまで、賢人くんのそばにいて幸せだと思ったことは何度もあった。賢人くんはモテるから、きっと他に彼女がいるだろうと思ってしまっていた。
私は賢人くんみたいに笑えないし、誰とでも仲良くなれないから、ふさわしくないかもしれないけど、でもずっと、賢人くんのこと、好きだったよ。
「私も」
ってすぐに言えたらよかったのに、言えなかった。
嘉村さんとのことを、忘れようとしても忘れられないから。嘉村さんのことはべつに好きじゃなかったけど、私は夢のために誘いを断れなかった。
こんな汚い私のことを知ったら、賢人くんはがっかりすると思う。だから、大好きだけど、「私も」って、言えない。
ごめんね、と言う勇気もなくて、連絡を先延ばしにしたまま、毎日賢人くんのことばかり考えていた。
「二百十六円になります」
「ちょっと、お姉さん。これ三百円の札ついてるけど。間違えてるんじゃないの」
バイト先でレジを打っていたら、お客さんに間違いを指摘された。
もう何年も百均で働いているのに。