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初メテノ夜ジャナクテ
第1章 1
「ケーキ、苺クリームとチョコのやつにしたんだ。ふわっとしてておいしいよ」
 ハート型のチョコが載った可愛いショートケーキを出してくれるなっちゃんは、高校時代よりさらに可愛くなったように見える。毎日愛されてるんだなって、話してるだけで伝わってくる。
「子ども欲しいねって話もときどきするんだけど、涼太さん今忙しいから。生まれるときは立ち合いたいから、もうちょっと落ち着いてからがいいんだって」
「そっかぁ。優しいんだね」
 私は結婚どころか彼氏がいたこともない。
 賢人くんには「好き」って言ってもらったけど、応える資格もない、し……。
 うつむいていたら「どうしたの」って訊かれたから、私は思わず、ここ最近あったことをぜんぶ話してしまった。
「え……」
 なっちゃんは、カラコンの入った目を大きく見開いて驚いていた。
「りおちゃん、そんなこと……」
 嘉村さんのことを聞いて動揺しているみたいだ。
「ごめん、こんな話して」
「いいんだよ、一人で抱えるの、重かったよね」
 なっちゃんは優しい。
「一生懸命夢を追ってるりおちゃんのこと、応援してるよ。だから、踏みにじったそいつのこと、許せないし。引きずってほしくないって思うんだ」
 お酒を飲まされたとはいえ、逃げなかったのは私なのに、責めないでいてくれる。
「賢人くんに悪いって、どうしてそんなに気になっちゃうのかな」
 好きな人が初めての人にならないことだってあるよ、となっちゃんは言ってくれるけど。
「何か、自分が汚いような気がして。賢人くんといると後ろめたくて、まぶしくてつらいの」
 言葉にしたら、自分の気持ちがくっきり見えたように思えた。
 本当は両手を広げて賢人くんの胸に飛び込みたいのに、秘密があるからできない。傷つきたくないから、受けとめられない。
「いっそ、賢人くんにも正直に話してみたらどうかな。きっと、分かってくれると思うよ」
 なっちゃんは隣のクラスだったけど、写真部で賢人くんの写真を撮ったこともあるし、何人かでいっしょに遊んだこともある。
「やっぱり、言うべきだよね」
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