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独占欲に捕らわれて
第7章 苦悩
「おまたせ、駅まで送るよ」
「ありがとう」
ふたりはどちらからともなく手を繋ぎ、駅まで歩いた。

駅に着くと、紅玲は名残惜しそうに手を離す。
「幸せな時間はあっという間だね……」
「大げさよ」
「そんなことないって。チサちゃんがいない日は、寂しいんだよ?」
紅玲は千聖の目をまっすぐ見ながら言う。

「そんなこと言う割には、呼び出す回数少なかったけど?」
「忙しかったからねぇ……。でも、これからはもう少しこまめに会えると思うんだ。それじゃあ、気をつけて帰ってね」
紅玲は千聖の頭を撫でると、人混みに紛れて姿を消した。
「えぇ、ちゃんと呼び出してくれないと、私が困るわ……」
千聖は人混みに呟くと、改札を抜けた。

契約2週間目、紅玲は宣言通り、千聖を呼び出す回数が一気に増えた。ほとんど毎日のように千聖を呼び出しては、外食をしたり、夜景を見たりした。3回に1回のペースでホテルへ連れ込む。
いくら紅玲が体力をあまり使わないように気遣いしていても、精神的に疲れてくる。
「できれば、土曜か日曜のどっちかは休みたいんだけど……」
紅玲は以前、断りたいなら断ってもいいと言ったが、自分の立場を考えると、どうしても断る気になれないでいた。

土曜日の朝、スマホを見ると紅玲からLINEが来ている。
「げ……。なんの用よ?」
警戒しながらトークを見ると、千聖には嬉しい言葉が並んでいた。
“仕事帰りだったのにたくさん付き合ってくれてありがと。土日はゆっくり過ごしてね”
「よかった、これで心置き無く休めるわ……」
千聖はスマホをベッドの上に置くと、朝食を作りに台所へ行った。

この土日、千聖は自由気ままに満喫した。パパから誘いのメールやLINEが何通か来ていたがすべて断って、部屋の掃除をしたり、昼からお酒を呑んだりと、とても有意義な過ごし方をしてリフレッシュした。

月曜火曜は、紅玲からの誘いで食事へ行くことになった。だがどちらも食事だけで終わり、ホテルに連れていかれることはなかった。
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