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独占欲に捕らわれて
第7章 苦悩
「本当にね……。母さんは何をしたかったんだか……。それでも父さんは、オレを施設に入れたりせずに手元に置いた。オレが小学生になるまで、世話係を雇ったんだ。その後2年くらいかな? 教育係を雇ってたのは……」
「教育係? なにそれ」
「料理や家事を教えてくれる人。……って言っても、父さんの部下の奥さんを雇ってたんだよ。教育係のおかげで、小学3年生になる頃には、一通りの家事をこなせるようになったよ。つまり、家政夫になったわけ」
紅玲は自嘲気味に笑った。

「家政夫って……。そんなの……」
あまりにも事務的で非道な行いに、千聖は言葉が見つからない。
「父さんよりはやく起きて、ごみ捨て行って朝食作って、帰ったら洗濯物や夕飯の準備。土日は家の掃除……。完璧主義者の父さんは、成績もトップクラスでいろって言うから、勉強だってしないといけなかった。最初はそれでいっぱいいっぱいだったけど、半年もすればそんな生活にも慣れちゃってね。そしたら今度は、株の取引……」
「はぁ!?」
驚いて素っ頓狂な声を出すと、紅玲は声を上げて笑った。

「あっはは、普通はそうなるよね。小学生が株だなんて。でも父さんは、“稼がぬ者食うべからず”なんて言ってさ、オレに株取引のいろはを叩き込んだ。自頭はいいからね、覚えるのは早かったよ。父さんより稼いだことだって、何回かある」
「神童だったのね……」
「うん、よく言われた。しばらくは株でどうにかしてたけど、次に教わったのはFX。こっちもすぐに覚えて、ある程度稼げるようになったよ。晴れてオレは人間として、父さんに認められるようになった」
「人間としてって……今までは……」
千聖が震える声で言うと、紅玲は彼女を抱きしめた。

「人型のゴミ、汚物。金食い虫。父さんからすれば、オレはかなり目障りだったと思うよ? オレを見る度に、きっとあの夜を思い出しただろうから」
「そんな……。酷すぎる……」
「まぁ、ある程度の歳になるとね、煽りスキルが身につくわけ。“オレが生きてるだけで、ロボットみたいな父さんが不快そうな顔して楽しい”って。だから案外楽しかったところあるんだよねぇ」
ざまぁみろ、と紅玲は笑う。
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