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独占欲に捕らわれて
第7章 苦悩
「そ、そう……。結構たくましいのね……」
「まぁね。オレの方が稼いだ日なんか、高級レストランに連れてっいったりしてさ。その時の父さんの顔と来たら……、笑えたね」
よほど面白かったのか、紅玲はクツクツ鳴らしながら笑う。

「で、そんなお父様が、今日はなんて?」
千聖はこのまま紅玲の気が紛れることを祈って、質問をする。
「それがさぁ、くっ、あっははっ! 会社が危なくなってきたから、資金をよこせって言うんだよ。このままじゃ赤字で、来月は社員達の給料も払えるかどうか……なぁんて涙ぐみながら言ってきてさ」
「はぁ!? なによそれ、ずいぶん勝手じゃないの……」
「あぁ、本当にね。わざわざこんなカッコして、ピアスまで開けて反抗しまくった息子に、土下座までしちゃってさぁ」
紅玲は唇のピアスを指先でつつく。

「え? まさかとは思うけど、反抗するためだけに、それやってるの?」
「そうだよ。本当はもう少しシンプルな服装が好きだし、自分の躯に穴を開けてまでするオシャレなんて理解できない。髪だってさぁ、染める気なんてなかったんだよ?」
白いメッシュをいじりながら、小さく笑う。理解できないと言いながらも唇にまでピアスをしていることから、彼の意志の強さが伝わる。

「凄まじい反骨精神ね……」
「まぁね。あぁ、でも……。斗真がいなかったら、ここまで出来なかったなぁ。もしかしたら、まだ父さんの言いなりになってたかもしれない」
紅玲は目を細める。
「斗真は何をしたの?」
「大学デビューのお手伝い」
紅玲は長財布から、2枚の写真を出して千聖に見せた。1枚目はブレザーの制服をキッチリ着こなした紅玲と斗真だ。どちらも黒髪で表情も固く、真面目そうだ。2枚目の紅玲は赤と黒で統一されたヴィジュアル系の服に身を包み、髪には白メッシュが入っている。斗真は髪色こそ変わらないが、紅玲と色違いで青と黒の服を着ている。こちらの写真の方が、ふたり共生き生きしている。

「へぇ、まるで別人ね」
千聖は写真を返しながら言う。
「でしょ? 同じ大学に入るって分かってから、斗真が父さんを言いくるめるための台本をオレに渡してきて、これでどうにかひとり暮らししてみろって」
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