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罪人の島
第3章 はじまり
夜中に乗船してから、到着したのは午前九時だった。
「ずいぶん遠いんですね。到着までに一晩もかかっちゃった」
「いやいや、出航したのは明け方だから、実は、数時間しか掛かっていないんだよ」
「そうだったんですね。絵里も私もぐっすり眠っていましたからね」
「美奈子さん、と呼んでもいいかな?」
「はい……と言いたいところですが、絵里が呼び捨てなのですから、私も美奈子でいいです。その代わりこれから私も院長とか先生じゃなくて、影山さんと呼ばせてもらっていいですか?」
「いや、それはダメでしょう? それなら私も睦郎(むつろう)でいいですよ」
「ちょっと、それはハードルが高いので、睦朗さんでも良いでしょうか?」
「えーっ、私は平気だけどなぁ」
「そうなの? じゃあ、絵里は呼び捨てでどうぞ」
「こだわるのは止そうか。もう、何でもいいですよ」
「うん、そうだね、睦朗」
「絵里、調子に乗るのやめなさい!」
三人で、はしゃぎながら島に降り立った時、まだ新しいポートの目の前に、車とバスが並んで停車しているのが見えた。
紺色の車に変わった様子は見当たらなかったが、バスの方は、運転席以外、全てのガラスが黒塗りで柵が取り付けてあった。
それを見た時に、美奈子は、ふと景山の人格について不安を覚えた。
美奈子たち一緒に冗談を言っている時の景山と、この黒塗りのバスを手配する景山が一瞬繋がらないような感じがしたのだった。
「さて、ちょっと忙しくなるよ」
「美奈子と二人でお手伝いしますから大丈夫!ねっ?」
「はい、もちろん!」
紺色のセダンに近づくと、後ろから歩いて来た武田が、さっと扉を開けてくれた。
「ありがとうございます」
美奈子は、ジャケットを着た武田を見て、着痩せするタイプなのだと思った。
景山が助手席に乗り込むと、武田は運転席に入った。
体の動きがしなやかで、やはり何かしらの武道をしているように見える。
車は、まだ新しく、革の匂いがした。
穏やかに滑り出した車は、両側に草の生えた田舎道を走ると、ほんの10分ほどで、建物に着いた。
坂道を下ると、セキュリティーがきちんとしているらしく、ガレージの扉の開閉は指紋認証式になっていた。
ざっと見たところ、20台ほどの駐車スペースがあったが、今は、美奈子達の乗って来た車以外に車はなかった。
「ずいぶん遠いんですね。到着までに一晩もかかっちゃった」
「いやいや、出航したのは明け方だから、実は、数時間しか掛かっていないんだよ」
「そうだったんですね。絵里も私もぐっすり眠っていましたからね」
「美奈子さん、と呼んでもいいかな?」
「はい……と言いたいところですが、絵里が呼び捨てなのですから、私も美奈子でいいです。その代わりこれから私も院長とか先生じゃなくて、影山さんと呼ばせてもらっていいですか?」
「いや、それはダメでしょう? それなら私も睦郎(むつろう)でいいですよ」
「ちょっと、それはハードルが高いので、睦朗さんでも良いでしょうか?」
「えーっ、私は平気だけどなぁ」
「そうなの? じゃあ、絵里は呼び捨てでどうぞ」
「こだわるのは止そうか。もう、何でもいいですよ」
「うん、そうだね、睦朗」
「絵里、調子に乗るのやめなさい!」
三人で、はしゃぎながら島に降り立った時、まだ新しいポートの目の前に、車とバスが並んで停車しているのが見えた。
紺色の車に変わった様子は見当たらなかったが、バスの方は、運転席以外、全てのガラスが黒塗りで柵が取り付けてあった。
それを見た時に、美奈子は、ふと景山の人格について不安を覚えた。
美奈子たち一緒に冗談を言っている時の景山と、この黒塗りのバスを手配する景山が一瞬繋がらないような感じがしたのだった。
「さて、ちょっと忙しくなるよ」
「美奈子と二人でお手伝いしますから大丈夫!ねっ?」
「はい、もちろん!」
紺色のセダンに近づくと、後ろから歩いて来た武田が、さっと扉を開けてくれた。
「ありがとうございます」
美奈子は、ジャケットを着た武田を見て、着痩せするタイプなのだと思った。
景山が助手席に乗り込むと、武田は運転席に入った。
体の動きがしなやかで、やはり何かしらの武道をしているように見える。
車は、まだ新しく、革の匂いがした。
穏やかに滑り出した車は、両側に草の生えた田舎道を走ると、ほんの10分ほどで、建物に着いた。
坂道を下ると、セキュリティーがきちんとしているらしく、ガレージの扉の開閉は指紋認証式になっていた。
ざっと見たところ、20台ほどの駐車スペースがあったが、今は、美奈子達の乗って来た車以外に車はなかった。