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罪人の島
第3章 はじまり
 彼女が手に鞭を持っていたので、絵里も美奈子も驚いた。

「はい、ここのソファーに座るのよ。名前を呼ばれたら、一人ずつ診察室に入る。わかったわね?」

 そこで女性は鞭で床を、ピシーンと叩いた。
 見ると、目つきの悪いのや、ふてくされた態度の男達が悪態をつきながら、病棟に入って来ているところだった。
 全員、手錠がわりのテープで手首を拘束されている。
 武田は、さっと罪人たちの群れに近づくと、一人ずつ、肩をつかむようにして、傍のソファーに並べて座らせた。

「こっちは大丈夫ですから、先生は、診察室へどうぞ。もうすぐ女たちも来ます」
「あ、そう? ありがとう」

 にこやかに答えると、武田が先生と呼んだ女性は、診察室へと向かった。
 そこで絵里と美奈子は驚いた。

「先生って、ドクター?」
「そうみたいね」
「びっくりしちゃった」
「……私たちも行くわよ!」
「え?」
「診察室に行くのよ。だって、お手伝いするんでしょう?」
「え? そうだけど……」
「じゃあ、行くわよ!」

 美奈子は、一緒に驚いていたはずなのに、絵里は、さっと気持ちを切り替え、目的を失わないところが偉いと思った。
 やはりそれは、看護師としての職業意識なのだろう。

 診察室には、第一から第三までの部屋があった。
 耳をすませると、どうやら景山の声は、第2の方から聞こえる。
 職員入り口の扉から入ると、バックヤード側から突き止め、二人で景山のところへ行った。
 美奈子たちが、景山の背後に少し離れて並んで立つと、景山が振り返ってコクリと一つ頷いてから、また顔を戻した。

 一人の男性が、景山の前に座っていた。
 男性の両脇には、ガードマンのような男性が二人、立っている。
 髪は五分刈りで、あまり人相の良い人物ではなかったが、ガードマンたちのおかげか、ドクターの前ではおとなしかった。
 景山が、男の手首に巻かれたテープを外しながら尋ねる。

「既往症は何かある?」
「いいえ、特に」
「では、全身状態を診るので、服を脱いで」
「全身って、全部脱ぐんですか?」
「もちろん、そうですよ」
「看護婦さんもいたら、セクハラじゃないですか?」

 男は不敵な感じでニヤニヤしながら言う。

「ほお、では、私も一緒に脱ぎましょうか?」

 絵里が小さく「プッ」と吹き出した。
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