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罪人の島
第3章 はじまり
「先生の裸なんか見たくないです」
「それなら黙ってお脱ぎなさい。それからベッドの上に仰向けになって下さい」
「で、身体検査の後、入院なんですか」
「ちょっとニュアンスが違うかもしれませんが、まぁ、そんな感じですね」
「じゃあ、さっさとやって下さい」
男は、全裸になって、その後は意外と素直にベッドの上に体を横たえた。
美奈子は顔を背けていたが、絵里は堂々としていた。
景山が合図をすると、ガードマン風の男たちがやって来て、男にベルトを掛けて固定した。
「何をするんだようっ!」
男がもがいても、屈強な二人には敵わなかった。
その様子を見ていた美奈子は、ドキドキしたが、絵里の方は意外と平気そうだった。
おそらく実際の病院でも、外来には、いろいろな人が来るのかも知れないと想像を巡らせていた。
「心配しなくてもいい。血液検査をするだけだから。ちょっとじっとしていないとはりが変なところに刺さるぞ」
影山が言うと、男は観念したかのように大人しくなった。
「いいか? 刺すぞ」
「よくねぇって言っても刺すんだろうがよぉ!」
物の言い方は荒かったが、男は顔を背けたまま、じっとしていた。
景山は、その様子を見ながら、血液を少し採った後、シリンジを付け替えて薬剤を注入していた。
すると、男は過ぎに目を閉じ、眠ってしまった。
景山が美奈子たちの方に向き直った。
「心配ないよ。少し眠ってもらっただけだから。さて、君達に相談なんだが、この男についてどう思う?」
「橋本孝28歳。同棲中の女性の子供で、4歳の男の子を殴って真冬のベランダに一晩中放置したことが、何度もあります」
「ヒドイ奴ね!そうなの? 男の子はどうなったの?」
「通報してくれた近所の人によると『お母さん、中に入れて!』って、何時間も泣いてたんだけど、ベランダに引越しの時の段ボールが放置されててて、その間で眠っていたらしいって、母親が言ってたの。おかげで風邪は引いたけど、命に別状はなかった」
「で、母親は、なんで止めなかったの?」
「やっと出来た彼氏だから、二人の時間の時には、自分も子供を邪魔に思っていたみたい。ご飯なんかは、ちゃんと与えてたみたいだけどね」
「身勝手よね?! どっちもヒドイ!」
「そうだね。男の子は、ほとんど喋らないそうで、この先のことを心配しているんだ」