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罪人の島
第4章 飼育
「では、鍵をお渡ししましょうか?」
「さっき診察したんだから、もういいのよ。でも、気になることがあったらお願いするわ」
「承知いたしました」

 原は、武田と同じようにがっしりとした体格で、更に背も高かった。
 しかし、美奈子は原に対しては、武田と同じような感情は湧かなかった。
 なぜだか自分でも分からなかったが、人の感情とは、そういうものだと思う。
 さっきまで、自分の身体を責めるようにしていた麗子に対しても、怒りとか恨みのような悪い感情は持っていなかった。
 嬉しかった訳ではないが、感じていたのは事実なので、どこか共犯者めいた感情を持っていた。

「行くわよ」
「はい」

 中に入って見ると、女たちは、下着さえつけていなかった。
 一応、独房の形で、一人ずつ別の房に入っているが、隣接した女性との間には鉄格子しかなかったので、さみしいということもないだろう。
 美奈子にとっては、ほぼ見覚えのある顔ばかりだったが、女達は、美奈子のことを覚えていない様子だった。

 房の前には、それぞれピンクの板に、木をくりぬいて作った二桁の数字のプレートが貼られていた。
 麗子がそれぞれの房の前で、番号で女を呼んだ。
 女達は、いろいろな表情で返事をした。
 美奈子には、それぞれの本名で呼ぶことも出来たが、ここでは、あえてしなかった。
 一人一人の罪状を思い返していると、麗子が、同じ番号を繰り返し呼んでいることに気が付いた。

「05番! 返事をしなさい! 05番!」

 この女は、竹下結衣だ。まだ、4歳の子に食事をちゃんと与えず、半分ネグレクトの状態で発見されても、自分の母親が手伝いに来ることになっていると言い逃れて、美奈子の上司の目をごまかした。

「うるせえんだよ!」

 突然、結衣が大きな声を出した。
 すると、デボラが鍵と鞭を持って入って来た。

「ちょっと下がってください」

 麗子達にそう言うと、鍵で扉を開けた。

「出て来なさい!」

 結衣は、素直に応じる気はないらしく、こちらに背中を向けて、ゴロリと床に寝転がった。
 すると、デボラは、ゆっくりとした動作で中に入り、鞭で結衣の腰の辺りを叩いた。

「ぎゃっ」

 結衣は、声を立てて丸まった。

「出て来なさいって言ってるの。もっとムチが欲しいの?」
「……」

 結衣は、ふてくされたような面持ちで、外に出て来た。
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