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罪人の島
第2章 島へ
 美奈子は、ナイフとフォークを持ったが、あまり食欲がなかった。
昨夜は、景山も美奈子たちと同じように飲食したはずなのに、ハムエッグとサラダ、トースト2枚をペロリと平らげていたが、美奈子は、半分を食べるのもやっとだった。

「調子が良くない?」
「そんなに悪くはないですが……、先生がお元気すぎるのではないかと思います」

 つい、思ったことが口から出てしまった。
 景山は、美奈子の言葉に声を立てて笑ってから、アルコールと一緒に、水をたくさん飲んでいた、という話をした。たしかに水を勧められた記憶があった。

 昨夜は酔っていたということもあるが、もしかすると、どこか判断が狂っていたのかもしれないとも思う。
 景山の言っていることは、正義感に満ちて正しいことのように聞こえるけれど、相手は司法の網にかからない罪人だと言っても、私的に制裁を加えるとなるとリンチということになるし、こちらが罪に問われるのではないだろうか。
 第一、罪人って、どういう罪を犯した人なんだろう?

「先生、一つ質問をしてもいいですか?」
「もちろんいいですよ。何でしょう?」
「罪人って、どういう人たちなんですか?」
「おやおや、昨夜は本当に酔っていたのですね」
「はい……、すみません」

 何故だか景山は、そこで声を立てて笑った。

「いいでしょう。では、食事が終わったら、案内したいところがあります。私の後について来てください」
「はい、じゃあ、今からでもいいですか?」

 美奈子は景山の空になったお皿を見ながら言った。

「では、行きましょうか」

 景山が階段を降りて行くのに後ろから従う。
 地上で言う2階分を降りた時、何だか遠くでうめき声のようなものが聞こえて来た。
 そして、景山が扉を開けた時、今度は、はっきりと美奈子の耳に声が届いた。

「早く出せ! 俺を誰だと思ってるんだ! お前ら、ただじゃ済まないぞ!」

 怒りのこもった声ではあったが、大きくはなかった。
 昨夜からここにいたとすれば、声を出すのに疲れたのかも知れないと美奈子は思った。
 そこには、男性が5人、女性が4人、別々に左右の鉄格子の中にいた。
 怒鳴っていると言うよりは、文句を言っている男の声に、聞き覚えがある気がした。
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