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呟き…
第8章 どこまでが浮気…5
千代子ちゃんが小さく頷く。
「ほんまにごめんなさい。」
もう一度、はっきりと千代子ちゃんが言う。
「だから…、謝る必要ないよ。」
「でも、来夢さんのお父さんが買ってくれた大事なバッグって悠兄が言うてた。」
千代子ちゃんが謝りたかった理由がわかる。
「あー…、いや、私も言い過ぎたから、ごめんね。」
あれは確かに大人気なかったかもと今なら私でも理解が出来る。
夕食が始まると千代子ちゃんが愚痴を溢す。
「来夢さんのお父さんっていいなぁ。」
「は?面倒臭いお父さんやで?」
私以上に大人気無い父親に悠真と私は苦労する。
「うちのお父さんはブランドのバッグなんか絶対に買ってくれへんもん。お小遣いが少ないからって言うて何にも買ってくれた事が無い。」
千代子ちゃんにとって唯一、我儘が言える相手が悠真だった。
その悠真を私に取られたと千代子ちゃんは感じてたらしい。
そういう意味では私は恵まれてる。
お父さんはずっと入院ばかりだった分、私とお母さんに激甘だから…。
私が欲しいと一言だけ言えばお父さんは何でも買って来てまう。
実際、私の車も免許を取って帰って来た次の日には我が家に置いてあった。
本当の意味で過保護に育った我儘な女は千代子ちゃんの方でなく私の方かもしれない。
流石に気不味いとか考える。
「あー…、まあ…、ほら、高校を出てバイトでもすればバッグくらい幾らでも買えるよ。」
これ以上の話は誤魔化すに限る。
ここで下手に千代子ちゃんの機嫌を損ねれば、間違いなく不登校問題のぶり返しになりかねない。
悠真はわかってて、いつもよりも口数が少ない。
時折…。
「俺も仕事が溜まってるから、出来るだけ1人で学校に行けるようになれよ。」
と千代子ちゃんに軽く注意する程度だ。