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はなむぐり
第2章 後悔
ここのところ、ずっとこうだ。
「蜜樹の気持ちも考えろよ。父さん母さんに私も。協力は…」
「蜜樹との向き合い方も分からない。もういいんだ…疲れたよ」
兄はそう小さく言うと、目を瞑った。
頰はこけ、父親譲りの彫りが深い美しい顔立ちは痩せると見るのがつらくなるほど。
兄は大学生のときに出会った女性と交際し、公務員の試験に合格したのちに籍を入れたらしい。というのも、私はどんな女性か知らないのだ。
両親に聞くとあまり良い印象はなく、男好きで冷たい態度だったようだ。
そして、兄が31歳のときに蜜樹が産まれた。
『やっとだ。智、やっとなんだ。無事に産まれた。可愛い女の子だ』
病院から電話をかけてくれた兄の震えた声が今では幻のようだ。