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はなむぐり
第2章 後悔
いつも通り、夕方に兄と蜜樹は帰った。
蜜樹は助手席の窓を開け、シートベルトを締めているにもかかわらず顔を真っ赤にして私に向かって必死に手を伸ばす。私が助手席側に立つとなかなか帰られないと兄に言われていたので、いつも両親の後ろに隠れていた。
でも、今日は『そばにいてやってほしい』と帰り際に言われた。
「蜜樹、またおいで」
「おじさん…浮気しちゃダメよ」
「分かってる。分かってるよ」
私の手の甲に頰をすり寄せて、最後にこれでもかとキスをする。ハンドルを握る兄はその様子に歯を見せて笑う。
そして、最後にチューッと音を立てて唇を離した。
「おじさんまた来るね。じいちゃんばあちゃん今日はありがとう」
最後に蜜樹は両親の手を交互に握り、ゆっくり窓を閉めた。
兄と目が合い、軽く手を振る。
兄は頭を軽く下げた。
そして、兄と蜜樹を、私たちは見えなくなるまで見送った。