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はなむぐり
第4章 誘う香り
やはり気になる。スーパーは20時までなので一度アパートに帰り、閉店間際に行った。嫌がられてもいいから。
表の明かりが消えてから店の裏側に行くと、次々と仕事終わりの方が扉から出てくる。
額から次々と流れる汗を手の甲で拭いながら待っていると、やっと出てきた。
「蜜樹!」
「おじさん?え!どうして…」
少し離れたところから声をかけたせいで驚かせてしまったが、鞄を両手で前に持って立っている蜜樹に駆け寄った。
「暗いから…心配になって。帰ろう」
黙って地面に視線を落としている蜜樹の手を握り、駐車場に向かった。振り払われると思ったが指を絡めて強く握り返し、ついてきてくれた。
車に乗ると、お互いに言葉が出てこない。
送り届けるだけだからそのまま発進させればいいのに。
膝の上に載せている鞄を抱きかかえる蜜樹の横顔は暗くて見えない。
「蜜樹」
「なあに?」
「少し、話そうか」
「どこで?」
「おじさんの部屋に来るかい?」
蜜樹は黙って頷いた。
すぐに父に連絡し、アパートへ向かった。