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はなむぐり
第8章 花に包まれる
町に帰り着いた頃には暗くなっていて、携帯を開くと蜜樹から着信があった。折り返し連絡するととても心配していたようで、安心した途端に泣きそうな声になった。自分のミスで帰りが遅くなったと嘘をつき、もう少しかかるけど心配しないでほしいと伝えた。
本当は今すぐにでも帰って抱きしめたいが、兄に思いを告げた後、父さん母さんに会いに行こうと思った。
蜜樹と一緒に会いに行くことはあっても、一人で行くのは照れくさかった。
実家に行く前に蜜樹が勤めるスーパーでパインやキウイが入った果物の盛り合わせを父さん母さんと蜜樹の分と買って、タクシーで向かった。
いつも通り古い鍵穴に鍵を挿して緊張しつつも開けた。リビングのドアの曇りガラスから人影が見え、お風呂上がりの母さんがびっくりした表情で出迎えてくれた。
「珍しい。一人?何か用?」
母さんは私の後ろに蜜樹がいないと分かった途端に少し不機嫌になった。それもそうだと思いつつ、兄の仏壇に手を合わせに来たことを伝えると何か察したのか深く頷いた。