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はなむぐり
第8章 花に包まれる
「何か飲む?あらやだ花なんか。定年には早いでしょう」
母さんは私が後ろに隠していた花に気づくと笑い、果物の盛り合わせを渡すと手を合わせて喜んだ。父さんはパジャマ姿でソファに深く座っていて、口数が少ないから私を見ても片手を上げるだけ。
リビングの隣の和室にある仏壇には兄が成人式のときに撮った美しい写真。
母さんは私が手を合わせる前に、ガラスのお皿に移した果物の盛り合わせを兄に。母さんと手を合わせ、後から父さんが手を合わせた。
すぐに帰ろうとしたが、母さんが今日作った煮物があるからとタッパーに詰めていた。その様子を横でなんとなく見ていた。
「二人だから余っちゃうのよ。蜜ちゃんが20歳になったとき一人暮らししたいって言ったときは本当心配したけど、智のところに住むって決まったとき。安心したわぁ」
母さんはよく味が染みた大根と厚揚げ、人参に昆布をバランスよく入れながら懐かしそうに話す。私はただ相づちを打った。
蜜樹は私と住む前に自立したいと一人暮らしを20歳を機に望んだ。しかし、父さん母さんが反対し、私と住むことが少し早まった。嬉しい気持ちと偽る自分の気持ちとで揺らいでいた。