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はなむぐり
第8章 花に包まれる
カーテンの隙間から漏れる強い光で目が覚めた。56年生きてきてこんなに愛する人とセックスに没頭したことがあっただろうか。痛む腰をさすりながら起き上がり、右側の蜜樹の枕に顔を埋めた。目を瞑り、私の上で跳ねる蜜樹を浮かべてまた身体を熱くさせる。
綺麗だった。厭らしくて可愛くて、恥ずかしさも垣間見えるからよけいに私には無縁だと思っていた支配欲が。
「智さん」
ドア越しに呼ばれ、蜜樹の枕に頭を載せて返事をした。ドアを開けた蜜樹は大きな白いTシャツを着ていて、前髪を上げて赤いピンで留めていた。
「朝ごはんできたよ。こっちに持ってくるから待っててね」
「ありがとう」
そう言って後ろを向いた蜜樹のTシャツの裾からお尻がちらりと見え、頰が熱くなった。年甲斐もなく照れる自分に苦笑しながら起き上がり、カーテンを開けた。いつもの出汁がきいた味噌汁の香りが寝室に届き、振り返ると朝ごはんをおぼんに載せて持ってきた蜜樹が布団の横に座っていた。実家から持ってきた黒くて丸いおぼんには、豆腐とワカメの味噌汁と海苔で巻かれた大きなおにぎりと卵焼き。グラスには冷たい緑茶が入っていて、さらに氷が浮かんでいる。
「食べようよ」
立ったままの私を見てクスクス笑いながら布団に腰を下ろした蜜樹が隣に座ってと促す。その前に新しいトランクスを履こうと引き出しに向かった。
「履かなくていいよ。休みなんだし、食べたらまたしよう」
その言葉に驚いてしまい、返事もしないまま蜜樹の隣に腰を下ろした。胡座を掻いた私の股の間には昨晩とは別物の大人しいペニスがあった。