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もしも勇者がラスボスと子作りをしてしまったら。
第1章 いきなりラストシーンです。
「くっ……」

私は声を漏らし、上半身を起こそうとした。

が、うまく腕に力が入らず再び頭を地面につける。

奇跡的に助かったとはいえ、この状況では死ぬのは時間の問題。

まもなく崩れ落ちる瓦礫の下敷きになるか、それとも限られた空気が消え失せ、息が出来なくなって死ぬか……

哀れなものだな……

わずかに残っている酸素を肺に取り込みながら、うっすらと開けた目で、宿敵の顔を映す。

自分と同じように傷ついた頬。

そして視線を下げれば、ボロボロになっている鎧は無様なほどに原型をとどめておらず、薄い布で覆われた勇者の身体がむき出しになっている。

その肉体はドラゴン族とはいえ女の私とは違い、筋肉によって引き締まっており、たしかに今まで見てきた人間どもよりも逞しい体つきをしている。

「……」

そんなことを意識した時だった。

突然胸の奥で、何かが疼いたのだ。

それはまるで死を前にした私に、生物としての使命を果たせと言わんばかりに強く身体に訴えかけてくる。

この身がここで終わるとしても、それでもなお、次の『命』を残せと。

種族を絶やさず、女としての己の役割を果たせと。
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