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もしも勇者がラスボスと子作りをしてしまったら。
第1章 いきなりラストシーンです。
なんだ……この感覚は……

今まで死に直面したことのない私にとって、それは初めてのことだった。

唯一無二の強さを誇り、この地に生ける者全ての頂点に立つ自分にとって、考えてもみなかったこと。

『種族』は意識したことがあっても、己の『性別』など意識したことはない。

「……」

間近で聞こえてくる勇者の息づかいが、私の呼吸のリズムを徐々に狂わせてくる。

それと同時に、疲弊しきっていたはずの心臓の鼓動が、違うリズムを刻み始める。

ドクンと脈打つ速度は早くなり、力を失い弱っていたはずの身体に熱を灯す。

おかしい……

死というものが私の思考を狂わせるのか、衝動にも近い感覚がどんどん胸の奥から湧き上がってくる。

疼きだす身体。

強く何かを求める欲求。

視界に勇者のはだけた身体がチラチラと映るたびに、ぐっと込み上げてくる衝動が強くなる。

なんなのだ、この感覚は……

身体の芯から押し寄せてくるような衝動を意識した時だった。

ふと間近に迫った勇者の顔を見た瞬間、その唇を見て、私の心臓が大きくドクンと脈打った。

直後、あがらえぬ本能の力に、私は咄嗟に勇者の背中に腕を回すと、あろうことか自分の唇を自ら相手の唇に重ねてしまう。
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