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淫縛~寝盗られ妻は逝き色獄に淫涙を流す(旧タイトル:淫妻)
第5章 チャプター05
 決定的だったのが、四人目の恋人の時だ。智は恋人が、ふたりの共通の友人と、彼の寝室でセックスをしているのを、実際に目にしてしまったのだ。
 そのことで、計らずも智はすべての原因を思い知らされることとなった。
 ――だって智君、セックスが下手なんだもの。
 後日、別れを切り出してきた彼女に、智は正面からそう、言われたのだった。
 今までも、智が気づかなかった――いや、気づこうとしなかったのかもしれないが、夜の生活を充実させることができなかったことが、恋人と長続きさせられなかった原因だったのだ。
 恋人と深い関係になっても、それとなく智は、相手が満足していないのではないか――そう思うことも、多々あった。が、もともと性欲の薄い智には、この性的能力だけは努力しても、どうすることもできなかった。
 恋人をつくったとしても、結局は裏切られてしまうのだから、これからはずっとひとりで生きていくしかないのだ。そのほうが、傷つくよりも、ずっといい。
 そう決意したはずなのだが――その自分が麗のような女性と知り合い、さらに結婚に至るとはまったく、想像もつかないことだった。
 麗は智の勤めている出版会社の事務課の女性で、営業の智とは接点はほとんど、なかった。たまに、営業課に顔を出すことはあるので、顔と名前は知っていたが、挨拶を交わす程度で、入社以来、会話をしたことはあまり、記憶になかった。営業課では、麗のことは美人で絶妙のプロポーションの持ち主ということで、休憩時間などに同僚の間で話題になってはいたが、智は関心を持たなかった。別の世界の人ではあるし、きっと智のことなど名前も覚えていないに違いなかった。
 その麗と知り合うきっかけとなったのが、数年前の新人の歓迎会でのことだった。智は当時はもう、新人ではなかったのだが、会社の宴会であるし、それに夕食代も浮くので気が進まないまでも、参加を決めていた。が、途中で連日の連勤の疲れがたまたま表面化してしまったのか、酔いがまわりすぎて退席することとなってしまったのだ。その時、介抱してくれたのが、まったく偶然なのだが、隣に座っていた麗なのだった。
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