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愛することで私たちは罪を犯す
第1章 1. 悲劇の序章

『それは、本当に響への忠誠心?』
「!?」
頭に響く声。
ハッとして周りを見渡す。
しかし、エントランスには受付嬢二人と清掃員一人しかいない。
『それとも、拾ってくれた先代への恩義から?』
(誰…?)
声は止まらない。
『違うでしょ?貴方が響を護るのは…捨てられたくないから』
「っ!!」
『結局、自分のためなのよ』
「誰だッ!!出てきなさい!!」
大声で叫んで、周囲を警戒する。
でも、琉泉の目に写るのは驚いてこっちをみているさっきの三人だけだ。
他に不審者らしき人物は、見当たらない。
(…幻聴?)
「おい、大丈夫か?」
背後からポンと肩を叩かれ、反射的に身構える。
が、そこにいたのは不審者ではなく、琉泉と同じようなスーツを着た童顔の男だった。
一ノ瀬が、見回りにしては長いと心配し、琉泉の様子を見に来たらしい。
「…脅かさないでよ。背後から近づくなんて…」
「なんだよ、機嫌悪いな」
思ったよりも余裕がなかったのだろう。
琉泉は言い方が少しキツくなってしまったと、反省する。
「ごめん、大丈夫。……エントランスの見回り、OKです」
無線で異常なしを報告し、向こう側から了解の合図をもらって、琉泉は一ノ瀬と一緒に社長室へと向かった。

