この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
愛することで私たちは罪を犯す
第1章 1. 悲劇の序章

琉泉は孤児だ。

先々代である祖父 偀が、ある日突然連れてきた、細くて小さな女の子。

偀は、児童養護施設から虐待にも似た嫌がらせを受けていた琉泉を、養子として引き取ったのだと響の両親に説明した。

養育費をはじめとする琉泉にかかる全ての費用を自分がもつから、響と一緒に育てて欲しい、と。

娘がほしかった母 鈴音は喜んで承諾し、父も「鈴音と響が良いなら歓迎する」と柔軟だった。

響も一人っ子だったこともあり、妹ができるのは嬉しかった。

(結局、妹のように思ったことは一度もなかったけどな)

最初はとても仲がよく、琉泉は響の後をずっとついてくるような子だった。

そんな琉泉が、とても可愛かった。

だが、いつからか彼女は変わってしまった。

響を仕えるべき主人として、自分を使用人として、明らかな壁を作っている。


そもそも、偀が琉泉にボディーガードの仕事を与えたのは、琉泉が八神に対して引け目を感じないようにするためだ。

別に、今までの恩義から八神家のために尽くせ、という意味で与えた仕事ではない。

ボディーガードという内容も、身体を張って守れというわけではなく、ただ彼女に向いている仕事がそれだったというだけだ。

偀自身は彼女に他に就きたい仕事があるのなら、喜んでそれを応援すると前々から言っている。

恩返しのために生きるのではなく、自分のために生きるように。

それが、偀、もとい八神の願いだった。

だから、琉泉には自由を得る権利がある。

そしてそれを与えるのは他の誰でもなく響の役割だ。

自分に服従を誓うこの子を、「もう十分だ」と手放してやれば、琉泉は自由になれる。

たが、それを響はしない。

もし護衛の役を解いてしまったら、琉泉はもう側にはいてくれないかもしれない。

家もきっと出てしまうだろう。

自由になって欲しいと願う一方で、その願いを壊しているのも自分なのだ。

さっきも同僚の一ノ瀬と、何かアイコンタクトを取っていた。

やれやれ、とでも言うような一ノ瀬のあの態度が、妙に心をざわつかせる。

自分の知らない琉泉が増えていくことに、変な焦りを感じる。

「はぁ……」

手が届く距離にいるのに、手を伸ばすことができないのが辛い。

そんな感情を紛らわせるかのように、響は琉泉から目をそらし、窓の外を眺めていた。

/52ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ