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愛することで私たちは罪を犯す
第2章 2. 偽りの世界

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………
あれから琉泉とは話していない。
もちろん、仕事に関する連絡などはしているのだが、以前のような他愛もない会話をすることはここ数日なかった。
というか、一方的に避けられている気がする。
「はぁ……」
溜まった仕事も手につかない。
それほど、響の脳内はあのふにゅっとした感触に蝕まれていた。
「……柔らかかったな」
ぎこちなく押し付けられた桜色の唇。
確かに感じた、優しいぬくもり。
(期待…してもいいのか…?)
向こうからそういう事をしてきたということは、その行為に意味があったととっていいのだろうか?
琉泉の気持ちも、自分に向いていると、自惚れてもいいのだろうか?
なにせ、17年の片思いだ。
実らないと分かっていた、それでも手放すことの出来なかった想いだ。
(…期待しないほうがおかしいだろう)
「はぁ………」
もう何度目かもわからないため息は、副社長へと消えていった。

