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愛することで私たちは罪を犯す
第2章 2. 偽りの世界

会社から出て、駅に向かおうとしたとき。
「佐伯 琉泉さん、ですね?」
「え?」
右側から声をかけられ、振り向くとそこには黒いスーツをかっちりと着た眼鏡の男がいた。
「あの…?」
「失礼。私、皇グループの会長である皇 鶫(すめらぎ つぐみ)の秘書を務めております、相模と申します」
皇グループ。
国内の中でも、八神と並ぶ規模の大企業だ。
なかでも会長の皇 鶫は経営について全く知らない琉泉でさえ、その名は聞いたことのあるほど有名な人物。
そんな人の秘書が何故自分に話しかけたのか、わからなかった。
「私に何か?」
「会長から貴女へ伝えたいことがあるそうです。時間が許すのならば、皇邸へ来ていただけますか」
「会長が?私に、ですか?」
心当たりがまったくない。
そもそも、皇グループは八神を敵視しており、特にここ数年は酷くなったと響がぼやいていたほど、仲が良くない。
ただ単にライバルというには、あまりにも酷な嫌がらせを陰でするほどだ。

