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愛することで私たちは罪を犯す
第2章 2. 偽りの世界

相模という秘書は、戸惑い、真意を探ろうとしている琉泉をみて、再び口を開く。
「警戒なさらなくても大丈夫です。危害はもちろん加えませんし、心配なようでしたら連絡されてもらっても結構ですよ。…貴女の大切な人に」
綺麗な微笑みだった。
だが、琉泉には貼り付けた営業スマイルのようにしか見えない。
「…どういう意味でしょう」
「あぁ、失礼。最も信頼する方に、の間違いでした」
発した後に少しきつい声だったとおもったが、それでも貼り付けた笑顔を崩さない相模に、ゾッとする。
(この人は…どこまで知っているの?)
「…帰ってからの仕事がありますので。失礼します」
一刻も早く、この場を離れなければ。
琉泉の脳内で鳴り響いた警報に駆られ、相模の横を通るときだった。
「知りたくないのですか?…あなたの、出生について」
「え………」
(出生…?)
はっとして相模を見たが、彼は怪しげに笑みを浮かべ、それ以上は何も言おうとしない。
まさか、皇グループの会長が知っているとでも言うのか。
こんな、なんでもない女の出生についてを。
「…こちらに車を待たせております。どうぞ」
「…………」
(真意が…読めない)
あれからずっと、琉泉の脳内では危険信号が出ている。
だが、今度の申し出を琉泉は断らなかった。

