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愛することで私たちは罪を犯す
第2章 2. 偽りの世界

ガチャンと戸が閉まる音がして、しばらく経った後。
「…どういうことか、説明してください」
「さて、琉泉様。ここではなんですので、大広間へと場所を移しましょう。ご説明、致します」
相模は先ほどの真顔はもう消えており、またあの嘘っぽい笑顔に戻っていた。
震えはもう、止まっていた。
ただそれは、得体の知れない恐怖感がなくなったからではない。
これから語られるであろう事実を、受け止める覚悟ができてしまった、心の表れだった。
…………………………
長い廊下を相模と琉泉は無言で歩き、やがて先ほどのドアと同じくらいの大きさのドアの前で止まる。
「こちらが大広間となっております」
くるりと振り返り、にこりと笑う相模に琉泉は冷たい目で無言を貫く。
「中で現社長の拓武様がお待ちです。お話は、拓武様からお聞きください」
コンコン……
「失礼致します。琉泉様をお連れしました」
「入りなさい」
木彫りで美しい彫刻が施してあるドアの向こう側から、ハスキートーンの低い声がする。
相模が手前開きのドアを引き、奥には素晴らしい広間が広がっていた。
長いダイニングテーブルの、一番奥。
主人が着席する場所に、50代くらいの男性が一人、座っていた。

