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愛することで私たちは罪を犯す
第2章 2. 偽りの世界

「やぁ、よく来たね、琉泉。いや、おかえり…といったほうが良いかな」
その顔を見て、琉泉は凍りついた。
別に、その人の顔が怖かったとか、のっぺら坊だったとか、知っている人だったとか、そんな単純な理由ではない。
琉泉の潜在的な感覚の中で、その顔は受け入れられない“嫌悪感”を感じさせるものだったのだ。
顔だけではない。
雰囲気、目、圧。
第六感で感じるようなものまで、身体自体がその存在を拒否しているかのようだ。
固まって口さえも動かせない琉泉に、その男性は笑う。
「久しぶりすぎて驚いたかな?…なんて、君は7歳より前の記憶がないんだったから、懐かしいとも思わなかったか。まぁ、そこに座りなさい。話をしよう」
男性は部屋の更に奥にある、向かい合わせのソファを指差す。
琉泉は、なにも考えることができなかった。
自分の意思で動かすことのない体を、相模が後ろからそっと背中を押し、なんとか歩きだし、ソファに座った。
男性は赤ワインのグラスをもって、琉泉の向かいへと腰掛けた。

