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愛することで私たちは罪を犯す
第2章 2. 偽りの世界

琉泉は、どこか他人事のようにその話を聞いていた。
否、どうしても自分のことだとは思えなかった。
だからだろうか、自分の過去を客観的に分析していた。
「なぜそのメイドは私を誘拐したのですか?メリットが見えません」
「その組織からの指示で、君を拉致したんだ。彼女自身は身代金を要求しようとしていたんだろう。だが、組織の目的は君を殺すことで、それを女に要求した。子供を殺すことが恐ろしくなった女は、殺したことにして児童養護施設へと預けたのだろうな」
そんなことが、あるのだろうか。
自分に殺すまでの価値があるとは到底思えない。
「その組織というのは?」
だから、興味本位のつもりだった。
どこの組織が自分を狙って、殺そうとしたのか。
その理由はなんなのか。
琉泉自身は、大方、皇グループへの怨恨からきたものではないかと、それくらいにしか考えていなかった。
拓武の応えを聞かなければよかったなどと、思うことも知らずに。
「……YAGAMIホールディングス。的確にいうと、八神 偀だ」
「え……?」
一瞬、何を言っているのか、琉泉は理解することができなかった。
(どこの、誰…ですって…?)
頭の中が真っ白になる。

