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愛することで私たちは罪を犯す
第2章 2. 偽りの世界

「そもそも、李月と瑠莉さんを殺害したのは、八神が仕組んだものだったんだ。当時、皇グループと八神は、一つの大きな契約を巡って争っていた。一族の未来を左右するほど、大きな仕事だ。君の父親である李月は、経営の才があってね。立場的には、我々、皇の方がリードしていた。…八神にとって、李月は目の上のたんこぶだったんだろう。物取りの犯行に見せかけて、殺害されたんだ。メイドとは別の、誰かを使ってね」
わからない。
何も聞きたくない。
聞きたくないのに、脳はしっかりと向かいで喋る人の内容を勝手にインプットしていく。
「ただ、その家には李月の他に妻と娘…つまり、君もいた。
犯人は同室で休んでいた瑠莉は殺害したが、別室の君には気付かなかった。だが、後に報道であの家には君もいたことが判明し、顔を見られたかもしれないという恐怖心から、真実が明らかになる前に始末しようと考えたのだろう。
スパイとして皇に忍び込ませていたメイドを使い、君を病院から連れ出した」
違う。
違う、違う、違う。
そんなこと、会長がするはずがない。
「そこからは、先程言った通りだよ。その女スパイが児童養護施設へと君を預け、君は逃げ出した。そして、逃げた先には…」
「会長が…八神会長が、いた…」
「そうだ。君と出会って、あの時の子供だと知った八神 偀は君が記憶をなくしていることを知り、すぐに処分するのではなく、自分の手元に置き、利用することを考えた。もし、記憶が戻ればすぐに始末してしまえば良いし、戻らなければ琉泉の立場を利用し、皇の弱みを握ることができるからね。…下衆な男だ」

