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『君×僕×妖怪』
第2章 ―記憶―
「戦乱だなんて大袈裟な…」
眉根を寄せ苦笑する日向を見て錺はクスクスと笑った。
「冗談一つ入れなきゃ、お前と喋ることないからな」
子供を扱うようにクシャクシャと髪を撫でられ日向は困ったような顔をした。そして思い出した、と呟き唐突に問いた。
「…ねぇ、また此処でってどういう意味?」
錺はなんのことか分からずはて、と言った顔をした。ぐるりと宙に視線をさ迷わせ思考を巡らせる。やがて分かったのか嗚呼、と呟いた。
「夕方のこと?」
「そっ。…小さい時か何かのこと?最近は会ってなかったし…」
何だか懐かしくて、胸が熱くなって、気が付いたら涙を流していた。自分でもよく分からない。錺との再会なんて、どれだけ離れていたって泣くほどではない。
だからきっと、小さい時――錺がいなくなる日にあの場で何かの契りを交わしたのでは?と思った。
錺は俯き言葉を探しているように見えた。やがて顔を上げると愛想のない、いつもの声で答えた。
「いや何でもない……きっと思い出せる」
言葉の端は掠れていて日向にはよく聞こえなかった。