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6月の花婿
第3章 散蒔かれた誘惑
「僕でどうかな?」
汐田の話を理解した呉は唐突にそう提案した。
「えっと…何がですか?」
「君の恋人役だよ。恋人が男で、君がゲイだって分かったらさすがに諦めるでしょ。」
「あ、なるほど。」
呉に詳しい話を聞かされて、両親を納得されるにはそれしかないかもしれないとおもった。
女が相手では別れされられて終わりだろうし、中々諦めてくれないのは分かりきっているからだ。
「完全に諦めさせるためにも、僕なら地位も高いし適任だと思うんだよ。」
「…わかりました。宜しくお願いします。」
汐田の返事を聞いて、呉は妖しげな笑みを浮かべた。
そんなことには気づかなかった汐田は、呉に救われた想いで帰ろうとしていた。
「ちょっと待ちなよ。」
汐田は腕を掴まれて、呉の胸に引き寄せられた。
「く、呉さんっ?」
「仮とはいえ、少しは恋人らしいことしようと思ってね。」
そう言った呉は汐田の唇に自分のそれを押し付けた。
「…んぅ?!」
必死に身体を離そうとしてもびくともしない。
汐田の身長は平均より少し高いくらいだが、それでも呉との身長差はあきらかだったからだ。
「ちょっ…ん…っ」
そのまま客用の長椅子に押し倒された。
焦った汐田は呉の下で足をバタバタと動かして暴れた。
「あんまり抵抗してると、縛っちゃうよ?
それとも汐田くんはそっちのほうがお好みかな?」
「ち、違います!何なんですか…」
「だから、恋人らしいことだよ。代行料金をとらない代わりに、身体で払ってってやつ。」
「馬鹿にしないで下さいっ。料金くらいお金で払えます。」
「十分で十万円だけど、本当に大丈夫?」
呉はからかうように汐田をみつめた。
汐田は動揺を隠せなかった。
さすがにそんな額を払える気はしない。