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夜明けまでのセレナーデ
第8章 新たなる運命
「…あ…」
悪戯が見つかった子どものようにばつの悪い貌をする。

「…全く…お前は…。
来月からここの教師になるというのに、ちっとも自覚がないな。
日本は負けたんだ。
露骨に嬉しそうな貌をするな。
…生徒の中には身内を亡くしたり、家が空襲されたものもいる。
個人的感情を露わにするな」
紳一郎は美形なだけに、怒ると本当に怖い。

「…はい…すみません…」
しょんぼりと頭を下げる。
険しい表情のまま、紳一郎が近づいてくる。
「これから、学院も教育方針の修正や矯正を迫られるだろう。
僕たちは政府の発表に一喜一憂するわけにはいかないんだ」
「…はい…」
カイザーが足元で、困ったような貌をして薫を見上げている。
…カイザー…、主人のデキが悪いと、お前も苦労するなあ…。

…不意に、涼やかな花のような薫りと温かな体温に柔らかく抱き込まれた。
「…良かったな…。
…戦争が…終わったな…」
…震える掠れた声…。
「…紳一郎さん…」
抱きつかれているから、表情は見えない。
「…暁人が…帰ってくるな…」
…優しい…兄のような声…。
じんわりと胸が熱くなり、薫は紳一郎の華奢な身体を抱き返す。
「十市さんも、帰ってきますよ…!」
「…うん…」
小さな声で頷き、薫の肩に貌を埋めた。
…その肩口が、温かく濡れてゆく…。

強く抱きしめ、力強い声で繰り返した。
「…二人とも、元気に無事に帰ってきますよ。
もうすぐです…!」

紳一郎は、返事の代わりに黙って薫の背中を抱いた。

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