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夜明けまでのセレナーデ
第10章 僕の運命のひと
…そうして、月日はあっけなく過ぎていった。

夏、秋、冬…。

…終戦から一年半が過ぎようとしていた。
相変わらず、暁人の消息は何一つ掴めなかった。

十市は学院の庭師兼馬丁として働き始めた。
隻腕となっても、彼の働きは少しも鈍ることはなかった。
まるで森の王者のような悠然とした存在感と静かな自信を身に纏い、紳一郎に黙々と仕えていた。
…しかし、控えめにしていても、彼の眼差しや所作には紳一郎への溢れんばかりの愛情が感じられた。

紳一郎は、人気がなくなると、十市に子どものように甘えていた。
普段、近寄りがたいほどに取り澄ました端正な美貌は、柔らかく緩み、甘く微笑む。
そうして、愛おしい恋人のそばを片時も離れようとはしなかった。

…そんな様子を微笑ましいと思いながらも、薫はやはり一抹の寂しさを禁じ得ずにはいられなかった。


…だって…。

薫は鬱蒼と茂る樅の木を見上げる。
思わずため息が漏れる。

…もうすぐ、クリスマスだ…。
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