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sweet poison ~愛という毒に身を侵されて……~
第1章 茜陽一の仕事
自動販売機でコーヒーを買って、ベンチに腰かけて飲んだ。
「にがっ…」
普段はあまり飲まないブラックコーヒー。
でもこのモヤモヤした気分を晴らしたくて、あえて買った。
「…アイツは紅茶が好きだったな」
眼を閉じれば浮かぶ、過去に愛し合った人物の姿。
茶色の柔らかな髪に、穏やかな琥珀色の眼をしていた。
ふんわり笑う顔が大好きだった。
しかし思い出そうとすればするほど、陽一の顔に苦渋の色が浮かぶ。
「羽月っ…!」
バキッという音で、現実に戻る。
手の中の缶を、無意識の中で握り潰していたらしい。
変形した缶を見て、悲しい気持ちになった。
「オレは…死にたくなかったんだよ。羽月」
呟いた後、コーヒーを一気に飲み干し、事務所へ戻った。
再び自分の席へつくと、事務員の一人が声をかけてきた。
「陽一さん、ちょっと今よろしいですか?」
「えっええ」
複雑な表情で声をかけてきたのは、父と共にこの工場を立ち上げた水野という五十を過ぎた男性だ。
元々この土地に住んでいたのが彼で、この土地の為に何かしたいと父に話をもちかけた。
父と水野は高校・大学と同じ学校に通っていて、親友だった。
父は有名な会社で営業をしていた為、水野は相談をしたのだ。
そこでできたのがこの工場だった。
何とか仕事が軌道に乗った時、彼は父と同じ歳だったのにも関わらず、その地位を陽一に譲り渡してしまった。
陽一の方が才能があり、そして自分には茜父子に借りがあるからと、きっぱり下がってしまったのだ。
「にがっ…」
普段はあまり飲まないブラックコーヒー。
でもこのモヤモヤした気分を晴らしたくて、あえて買った。
「…アイツは紅茶が好きだったな」
眼を閉じれば浮かぶ、過去に愛し合った人物の姿。
茶色の柔らかな髪に、穏やかな琥珀色の眼をしていた。
ふんわり笑う顔が大好きだった。
しかし思い出そうとすればするほど、陽一の顔に苦渋の色が浮かぶ。
「羽月っ…!」
バキッという音で、現実に戻る。
手の中の缶を、無意識の中で握り潰していたらしい。
変形した缶を見て、悲しい気持ちになった。
「オレは…死にたくなかったんだよ。羽月」
呟いた後、コーヒーを一気に飲み干し、事務所へ戻った。
再び自分の席へつくと、事務員の一人が声をかけてきた。
「陽一さん、ちょっと今よろしいですか?」
「えっええ」
複雑な表情で声をかけてきたのは、父と共にこの工場を立ち上げた水野という五十を過ぎた男性だ。
元々この土地に住んでいたのが彼で、この土地の為に何かしたいと父に話をもちかけた。
父と水野は高校・大学と同じ学校に通っていて、親友だった。
父は有名な会社で営業をしていた為、水野は相談をしたのだ。
そこでできたのがこの工場だった。
何とか仕事が軌道に乗った時、彼は父と同じ歳だったのにも関わらず、その地位を陽一に譲り渡してしまった。
陽一の方が才能があり、そして自分には茜父子に借りがあるからと、きっぱり下がってしまったのだ。