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片時雨を抱きしめて
第2章 第二章 片時雨

ただ家から離れたくてがむしゃらに走っていた。気づけばしらない町に来ていて、バケツをかぶったように体は濡れていた。冷静になればなるほど体は芯から冷えて指先に息を吹きかけた。
外はもう暗く、夜の冷えと容赦のない雨が体温を奪っていく。
なにか温かいものでも買おう。近くにコンビニくらいならあるだろう。
あ、___財布。
靴も履かず、上着も財布も携帯も、何も持たずに飛び出してきたことを心から後悔した。
どこか雨宿りできる場所を探そう。
一人で歩いているとさっきまでのママの泣き声が頭に響いた。
__雪乃ちゃんはママのこと捨てるの。
ずいぶん年を取ったママの顔から流れる大粒の涙と、その口から発される悲痛な叫び。私のことを糾弾して、否定して。
仕方がない。
仕方がないと、言い聞かせてきた。私だけはママのそばにいなければならないのだと。

