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片時雨を抱きしめて
第2章 第二章 片時雨

どれほど時間がたったのだろう。もしかしたら、眠っていたのかもしれない。
車のヘッドライトがあまりにも明るくて顔を上げた。
その車は明らかに私のほうに近づいてきていた。まぶしさに私は目をきゅっとつむった。
車は私のすぐ前でとまり、バン、とドアの閉まる音がした。誰かがおりてきた。
「綿谷……?」
その声の主が、私の顔を見て、そう言う。
学校帰りなのだろうか、いつものスーツに、少しだけ緩めたネクタイ。
狭い生徒指導室で何度も聞いたその声。
「先生……」
もう尽きたと思っていた涙がまた不意にあふれ出す。きっとすごく、すごくひどい顔をしているのに、私は座り込んだまま泣き続けた。
「なんも、きかないほうがいい?」
先生が傘をひらいたあと、私のそばにしゃがみこむ。
私は小さくうなずいた。冷静に、的確に、説明できる自信などなかった。

