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片時雨を抱きしめて
第2章 第二章 片時雨

先生は、ん、と小さく応えて上着を脱いで私の肩にかける。先生の手が私の肩に置かれて、優しくさすった。その暖かさにまた涙が込み上げてきた。
しばらく先生はなにも言わなかった。ただ私の肩を優しくさすり、私が泣き止むのを待っていた。
「とりあえず車乗りな、風邪ひくから」
先生が私の肩を抱きながら立ち上がった。私もそれにつられて立つ。
ずっとしゃがみこんでいたから、ぐらりと視界が回る。
あ、と足をもつれさせかけたところで、先生の胸の中にぽすんと収まった。
「あっ、ごめんなさ__」
体を離そうと腕を胸にあてた瞬間、ぎゅ、と力を加えられる。
え、と思わず声が漏れた。先生の腕が私の背中を抱える。先生の体の温かさや、心臓の音が頬から伝わる。
「大丈夫だから。俺は綿谷の味方だから。言いたくなったら、言えばいいから」
先生の低い声がいつもよりずっと近く、聞こえる。
おさまりかけていた涙があふれ、先生の服を濡らした。先生の力に応えるように私も腕をそっと回した。想像しているより、先生の体は分厚くて、こんなときなのに心が甘く疼いた。

