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片時雨を抱きしめて
第2章 第二章 片時雨

先生の家はひどく殺風景だった。
生活に必要な家電と、あとは大量の本。本、どこをみても本。しかしその収納は乱雑で本棚におさまりきらない多くの本が無造作に床に積まれていた。
「こくごきょーしって感じ、先生の部屋」
「でしょ」
先生が電気をつけながら言う。
「シャワー浴びてきな。風邪ひくよ」
これつかって、と手渡された服はあきらかに女性用のもので、スウェットの間にシンプルな下着さえも見えた。
「え?なんで」
私は思わず問う。
「あー前の、置いてったやつ。下着はさらだから」
先生はどこか遠くを見ながら言葉を濁すように言った。
先生の前の、__前の女。
相手の家にスエットや新品の下着をおいているような関係。きっとすごく近しかったに違いない。
私はあいまいに笑って、ああ、そうなんだと応えて脱衣所に入った。
洗面台の鏡をみると想像以上にひどかった。
顔は涙と雨や泥で薄く汚れており、髪は車の中で少しはかわいたもののぐっしゃりと濡れている。
シャワーのあたたかさは冷え切った体を痛いほどに癒した。
体の芯からあたためると、あまり長く浴びていては、と思い先生から渡された下着とスウェットを着、脱衣所を出た。

